そこへやっとさっきの人が、帰ってきました。

フォレスト やあ! どうもありがとう。あなた、思ったとおりの人だ。」
ジョージア ・・・?
フォレスト おめでとう! あなた合格です!」
ジョージア 合格?」
フォレスト 天使の卵です、これ。」
ジョージア えっ!」
フォレスト ジョーダンです。 ニワトリです、決まってるじゃないですか。 アハハハハ」
ジョージア そうよね・・・あはは。・・・じゃ、これで。さようなら」
フォレスト あ、待って。この卵、あなたにあげます。」
ジョージア えっ! これ、あなたの大切なタマゴじゃなかったんですか!」
フォレスト ええ、とっても大切なたまごですよ。でも、「私の仕事」はもう終わりましたから。いい卵だから 明日の朝食にでもして下さい。じゃあ これで。・・・ほんとうにありがとう。 あ、ほら、虹! 願い事は大きい方がいいですよ。」
ジョージア え? 待って まってよ。(フォレスト去る)
・・・うわー、きれいな虹!」

虹を見上げるジョージア。はっと思い出して先を急ごうとすると、そこへ女の子がやってきました。
なんだかとっても元気がなさそうでした。女の子はベンチに腰掛けため息をつきました。
ジョージアは、とても気になって声をかけてみました。

ジョージア どうしたの? 迷子?」
ソニア ううん。あたし大人になりたくないの。」
ジョージア どうして?」
ソニア だって、楽しそうに笑ってお仕事してる大人見たことないから。」
ジョージア あら、楽しくお仕事してる大人もいるわよ。」
ソニア うそ! そんなのうそだわ! どうして、もっと楽しく好きな事だけして生きられないのかしら。」
ジョージア そうねえ。うーん、みんな笑ってお仕事したいんだけど・・・いろいろとあってね。なかなか難しいんだよね。」
ソニア あなたもふつうの大人なのね。 大人はいつもそう言うのよ。」
ジョージア あなたのママがそう言ったの?」
ソニア ママは、いつもお仕事に追われてて、うちへ帰ってもあたしと口も聞いてくれないの。」
ジョージア じゃあ、パパ?」
ソニア パパはいないの。 でもあたしの覚えてるパパはいつもつまらなそうだったわ。 だからあたし大人になりたくないの。 子供のままでいたいの。」
ジョージア ねえ なにか大きくなったらやってみたいことってないの?」
ソニア そんなのないわ。」
ジョージア たとえば、・・・お花に囲まれて、大きなお城で暮らしたいとか、豪華客船で船で世界中を旅してみたいとか・・・
宇宙船に乗って銀河系を散歩なんていうのもいいなあ・・・」
ソニア 大人って単純ね。子供がみんなおとぎ話の世界を信じてると思ってる。
まさかあなた、「この卵は天使の卵だよ」とか「あの虹は神様がつくって天使がすべり台にしてるんだよ」なんて子供だましのお話するんじゃないでしょうね。
大気中の水蒸気に太陽の光が反射して虹ができるなんてジョーシキだよね。」
ジョージア そりゃそうだけど、でも、のびのびとした空想やどこまでも広がる夢を持つことも、同じくらい大切なことなのよ。」
ソニア そうかしら。」
ジョージア ねえ。もしよかったらママが帰ってくるまで私の家にこない?おいしいクッキーがあるの。」
ソニア いまどきの子供が知らない人について行くはずないでしょ。」
ジョージア そっか。・・・じゃママのお許しがでたら遊びに来て。この先の白い扉の家よ。忘れないでね。」
ソニア かんがえとくわ バイバイ」 (去る)
ジョージア バイバ〜イ。・・・ 天使の卵だっていいじゃない、ね。」
 
暗転